ちょっとの温かさでこころも身体もほどけていく
2026年2月 雨水

雨水を迎えました。
雪が雨へと変わり、凍っていたものが少しずつほどけていく頃です。
白州の冬は、あまり雪が降らず、
強く乾いた風が吹く、みずみずしさに乏しい季節なので
雨水の潤いがとても心地よく感じられます。
鶏舎のまわりの土も、いつの間にかやわらぎ
長靴の裏にまとわりつく感触が
春の始まりをより一層演出してくれます。
冬の土はカチカチだったんですよ。
まだ空気は冷たいけれど、どこか水の匂いを感じます。
この水が大地を潤して、静かに息を吹き返していきます。
のどが渇いた時に飲む水の心地よさが、自然の風景に感じられ
とても不思議です。
鶏たちは、季節の変わり目には、卵の殻が薄くなったり
産卵が少し落ち着いたり、季節のうねりが影響しています。
けれど、特別に怒ったり、悲しんだりせず
毎日穏かに卵を産んでくれます。
春へ向かうこの季節だからか、卵を手にしたとき、
殻の内側に、確かな温もりを感じます。
雨が大地をゆるめるように、この卵の持つ命の潤いが
食べた人の体をみずみずしくして、
一日を駆け抜ける力になってくれたらと思います。
特別派手なものではないですが、
炊き立てのごはんの上にのせた黄身の色を見つめたり、
湯気の立つ卵焼きの香りを感じたりすると、
ふっと一息ついて、
心がほどけるような感覚を覚えます。
冬至の頃から随分と日が長くなりました。
大げさですが、宇宙が明るくなった気分です。
まだ水に残る冬の冷たさは、
春を願う気分の高まりをうまくおさえてくれます。
寒い冬のあいだぎゅっと縮こまった体や気持ちが
少しずつ、温かさの中でやわらかくほどけていきます。

鶏もまた、そんな風に季節の変化を感じながら
日々穏かに卵を生み出しています。
自然て、どうにも動かせないですよね。
ただ、その流れの中で立っているだけでも大変な時もあります。
けれど、できることをやります。
鶏が毎日卵を産むように。
できることをやるには、心を落ち着けて、
身体のリズムを整えるのがいちばんです。
静かに目をとじて、深く長い呼吸を取り入れています。
雨水の「静かに動き出す」季節にぴったりです。
雨が静かにしみ込むように、春もまた、静かに始まっています。
静かに穏かに、変化していく卵の味わいをどうぞお楽しみください。
たおファーム